転職をすると新しい職場で源泉徴収票の提出を求められますが、なぜ必要になるのでしょうか?そもそも源泉徴収票ってどんなもの?いつまでに提出すればいい?ない場合はどうしたらいい?
今回はこのような源泉徴収票に関する疑問にまるっとお答えします。特にこれから転職を控えている方は必見です。

そもそも源泉徴収票って何?
源泉徴収票というとなんだか難しいイメージがあるかもしれません。まずは源泉徴収票とは何か?という基礎知識から押さえていきましょう。
源泉徴収票とは?
会社に勤めている場合、毎月給料という収入がある一方で、所得税が控除されていています。その額は毎月の給料明細で確認することが可能ですが、1年間の金額はわかりません。源泉徴収票とは1年間の収入(給与額)と所得税額が記載された書類です。
会社が源泉徴収を行っている場合、所得税法第242条で会社は従業員に対して源泉徴収票を発行しなければならないと定められています。
源泉徴収票は確定申告や年末調整で必要となる
まず源泉徴収票が必要になる機会として確定申告が挙げられます。一般的な会社勤めの方であれば所得税が給料から控除され、会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告をする必要はありません。ただし、年収が2,000万円を超える方、副業や配当金などで給料以外の収入がある方、医療費控除やローン控除を受ける方は自分で確定申告を行わなければなりません。給与収入と所得税の源泉徴収額を把握して正確に申告・納税するために、源泉徴収票が必要となります。
転職する際にも源泉徴収票が必要です。源泉徴収票がないと1年間の正確な収入と所得税額が計算できないため、転職先で年末調整を行ってもらうことができません。そこで、転職先から源泉徴収票の提出を求められるのです。
また、自分の収入を証明するために使うこともできます。たとえば住宅ローンなどの借り入れを行う際、クレジットカードを作る際には審査があり、年収も申告しなければなりません。年間の給与額が明記されている源泉徴収票があれば、年収額を証明することができます。
源泉徴収票の見方
源泉徴収票を見るポイントとしては大きく「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の4点があります。
「支払金額」とは会社から支払われた給料や賞与、手当などの1年間の総額です。ただし、交通費や出張手当などは非課税となるため、ここには含まれません。
「給与所得控除後の金額」とは支払金額から給与所得を差し引いた金額です。給与所得控除は税負担を軽減する制度で、収入金額に応じて一定額もしくは一定割合の金額が控除されます。
「所得控除の額の合計額」は給与所得控除以外の控除額の合計です。たとえば基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがあり、これらの合計額が記載されます。
「源泉徴収税額」とは源泉徴収された額、つまり1年間に支払った所得税の総額のことを指します。所得金額(給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額)によって異なります。

なぜ転職時に源泉徴収票が必要?いつもらえる?いつ提出すればいい?
1年間の収入と所得税額がわかる源泉徴収票ですが、なぜ転職時に必要となるのでしょうか?いつ前職場からもらえて、いつ転職先に提出すればいいのでしょうか?ここからは転職と源泉徴収票の関係について見ていきましょう。
転職時に源泉徴収票が必要な理由とは?
転職をした場合、新しい職場で年末調整を行ってもらわなければなりません。2023年6月にA社からB社に転職した場合、年末調整は転職先であるB社が行うことになります。しかし、B社の担当者はA社に在籍していたときの収入がわからないと、年末調整を行おうにも正確な計算ができません。そのため、転職先から前職場で発行される源泉徴収票の提出が求められるのです。
源泉徴収票はいつもらえる?【前職場】
源泉徴収票は1年間の給与額と源泉徴収額を明らかにする書類なので、12月~1月に発行されるのが一般的です。一方、従業員が退職する場合は、その従業員の最後の給与と源泉徴収額が確定した後に発行されます。所得税法226条では退職してから1ヶ月以内に発行しなければならないと定められているため、1ヶ月以内には源泉徴収票がもらえるはずです。
源泉徴収票はいつ提出すべき?【転職先】
前職場から源泉徴収票が発行されたら可能な限りすぐに提出しましょう。転職後には担当者から源泉徴収票を提出するよう指示されるかと思いますので、指示された期日までに提出しましょう。特に11月~12月に転職した場合、源泉徴収票の提出が遅れると年末調整の手続きに間に合わなくなってしまう可能性もあります。仮に前職場で源泉徴収票が発行されていない場合は確認してみましょう。

こんなときどうする?転職時の源泉徴収票Q&A
日常生活を送るうえでは源泉徴収票が必要になるシーンはあまりありません。そのため、いざ必要になったときに戸惑われる方もいらっしゃるかと思います。そこで、ここからは源泉徴収票に関するよくある疑問点にQ&A形式で回答します。
源泉徴収票をなくしました。どうすればいいですか?
源泉徴収票をなくした場合は前の職場に再発行してもらうように依頼しましょう。いつの年度のものが欲しいのかを明確に伝えることで、スムーズに再発行してもらえます。基本的に無料で発行してもらえますが、郵送してもらう場合は郵送代などの負担を求められることもあります。
源泉徴収票の発行が間に合わないようです。
前職場で源泉徴収票の発行が遅れている、1月に転職したなどの理由で源泉徴収票の発行が年末調整の手続きに間に合わない場合、自分で確定申告を行う必要があります。前職場で源泉徴収票が発行されたら、それをもとに申告書を作成して税務署に提出するかオンラインで手続きを行います。特に12~1月に転職する場合は年末調整の手続きに間に合うかどうかも確認しておきましょう。
前職場で源泉徴収票の発行を拒否されてしまいました。
前述のとおり事業者には従業員に対して源泉徴収票を発行する義務が法律で定められています。発行を依頼したにも関わらず源泉徴収票の発行を拒否した場合は違法行為に該当しますので、税務署に相談しましょう。「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、前職場に行政指導がなされます。
1年間に複数回転職した場合はすべての職場の源泉徴収票が必要になりますか?
はい。たとえば2023年にA社からB社に転職し、さらにその後C社に転職した場合、C社の担当者は23年の収入額と源泉徴収額をすべて把握して年末調整を行わなければならないため、A社とB社の源泉徴収票が必要です。
源泉徴収票を提出したくない場合はどうしたらいいですか?
源泉徴収票が間に合わなかったケースと同様、自分で確定申告を行えば源泉徴収票を提出する必要はありません。転職先に自分で確定申告を行う旨を伝えましょう。
まとめ
源泉徴収票は転職時に必須の書類の一つです。仮に源泉徴収票を提出しないと年末調整の手続きが間に合わず転職先に迷惑をかけてしまう、適切な税務申告・納税ができなくなってしまうおそれがあります。また、必要書類を提出しない、期限が守れないということで、いきなり転職先にマイナスの印象を与えてしまうことにもなりかねません。
転職する際には前職場から確実に源泉徴収票を受け取り、紛失しないようしっかりと保管し、転職先の担当者から求められたら速やかに提出することが大切です。仮に源泉徴収票がもらえていない場合は早急に確認し、紛失してしまった場合は再発行を依頼しましょう。
参考:雇用保険法|e-Gov法令検索https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000033