物流業界では専門的な技能や知識が求められるため、資格を取得することで有利に働く可能性が高いです。
また、資格や免許がないと従事できない業務もあります。
この記事では物流業界に就職・転職を考えられている方向けのおすすめしたい16の資格をご紹介します。
物流系の資格にはどんな種類がある?
資格には大きく分けて「国家資格」「公的資格」「民間資格」の3種類があります。
まずはそれぞれどのようなものなのかを簡単にご紹介します。
国家資格
国家資格とはその名のとおり国の制度に基づいて、中央省庁や都道府県などが所管する資格・免許制度のことです。
自動車の運転免許は一番代表的かつ身近な国家資格といえます。
都道府県の公安委員会が発行する運転免許を取得することで自動車を公道で運転することが許可されます。
国家資格を取得することで特定の業務(行為)を行うことが認められる「業務独占資格」のほか、特定の技能や知識があることを証明する「検定」も存在します。
たとえば技能士検定は厚生労働省が所管し職業能力開発協会が実施する国家資格です。
公的資格
公的資格とは国家資格ではないものの各省庁や大臣、地方公共団体や首長などが認定している資格のことを指します。
たとえば商品衛生責任者や防火管理技能者、臨床心理士などの資格が挙げられます。
民間資格
民間資格とは企業や学校、民間団体等が認定する資格のことです。
あくまで知識や技能が一定水準に達していることを証明する目的で認定されていますが、特定の民間資格を取得していることを採用条件としている、あるいは特定のポジションに就く際には特定の民間資格を保有していることを内規で定めているといったケースもあるため、転職前や転職後に取得を求められる場合もあります。
資格を取得するメリットは?
資格を取得することで、就職・転職が有利になる可能性があります。
特に物流業界では専門的な技能や知識が求められる業務、あるいは免許や資格を取得していないと従事できない職種も数多くあります。特に難関資格の保有者は引く手あまたです。
また、就職後に資格取得を目指すことで知識やスキルアップにつながり、できる仕事の幅が広がります。
業務の質やスピードがアップすれば、会社からの評価も上がり昇給や昇格の可能性が高くなります。
また、資格手当を支給している会社もあり、資格を取得した時点で数千円~数万円月収がアップする可能性もあります。
物流業界で働く上で役立つ資格16選
ここからは物流業界で働く上で役立つ資格を、「現場系」「管理系」「国際系」というジャンル別に、合計で16種類ご紹介します。
現場系
まずはドライバーやオペレーターとして現場で働く上で役立つ資格を見ていきましょう。
運転免許
ドライバーとして就職するのであれば運転免許は必須です。
特に中型免許や大型免許を取得していれば、運転できる車種の幅も広がります。
また、可能であればAT限定ではなくMT免許を取得されることをおすすめします。
ドライバー以外でも営業、管理、事務など、ありとあらゆる職種において外出する機会は大なり小なりあるので、まずは運転免許の取得を目指してみましょう。
教習所に通う方法と試験場で試験を受ける方法がありますが、教習所が一般的です。
普通自動車免許であれば取得費用は20万~30万円程度で、2~3ヶ月ほどで取得できます。
フォークリフト運転技能者講習
フォークリフトとは荷物を持ち上げたり傾斜させたりして運ぶことができる運搬用車両です。
物流倉庫や工場、貨物ターミナル、建設現場など、物が集まる場所には必ずといっていいほどフォークリフトが活躍しており、フォークリフトの運転者の需要も高いです。
フォークリフトを運転するためには「フォークリフト運転技能者講習」という講習会を受けなければなりません。
学科が1日、実技が3日で取得費用は2万円程度です。難易度はそれほど高くなく、合格率は90%といわれています。
玉掛けクレーン
クレーンは特に工場や建築現場、貨物ターミナルなどで重量物を吊り上げ運搬する際に利用されています。
玉掛けとはクレーンのフックに荷物を掛けたり外したりする作業のことです。
吊り上げ重量1t未満の荷物を玉掛けするためには「玉掛け特別教育」という2日間の学科・実技研修を受けなければなりません。費用は1万5,000円~2万円程度で、合格率は90%程度です。
「玉掛け技能講習」を受ければ吊り上げ重量1t以上の荷物を玉掛けできるようになります。
学科2日、実技1日の3日間研修を受けなければなりません。費用は2万~4万円程度で、合格率は90%程度です。
危険物取扱者
物流業界では油やガスなどの危険物を運搬する、あるいは車両や装置の燃料を貯蔵するなど、危険物を取り扱うケースもあります。
危険物取扱者とは消防法に基づく危険物(ガソリンや灯油、ニトログリセリン、ナトリウムなど)を取り扱う際、あるいは取り扱いに立ち会う際に必要となる国家資格です。
危険物は第1種から第6種まで分類されています。
危険物取扱者資格はすべての危険物が取り扱える甲種、1~6種のうち特定の危険物のみが取り扱える乙種、第4種のうちガソリンや灯油などの限定された危険物のみを扱える丙種の3種類があります。
一番難易度が低い丙種は受験資格がなく、誰でも受験可能です。
受験費用は4,200円で、合格率は50%程度といわれています。
一方最難関である甲種はすでに乙種を取得している人、もしくは大学で化学を専攻した人などの受験要件があり、合格率は30%程度といわれています。
包装管理士
物流業界には品物を箱に詰めたり緩衝材で巻いたりする梱包作業がつきものです。
商品を安全に送り届けるために、そして商品の価値を上げるために、実は梱包には高い技能や知識、センスが必要となります。
包装管理士は日本包装技術協会(JPI)が運営する民間資格で、取得することで梱包に関する専門的な知識とスキルをアピールすることができます。
資格を取得するためには3ヶ月間の講座を受講し最終試験を受けなければなりません。
包装関連業務の実務経験があることが受講条件となっており、受講料は日本放送技術協会の会員は34万1,000円(消費税込み)、一般は54万3,400円(消費税込み)です。
そのため、すでに就業している方がスキルアップやステップアップのために取得するケースが多いようです。
海技士
海技士とは大型船舶(20t以上)の乗組員、具体的には船長や航海士、機関長、機関士、通信長、通信士が取得すべき国家資格です。
一般的には商船系大学や商船高専などの教育機関に入って2年以上の教育を受けて取得しますが、「六級海技士短期養成課程」という10ヶ月半の教育課程を経て取得する方法もあります。
取得費用は教育機関によってさまざまですが、六級海技士短期養成課程でも40~50万円程度必要です。
また、合格率は一番やさしい6級の場合は90%程度ですが、最難関である1級の場合は30~40%程度です。
ロジスティクス・オペレーション
ロジスティクス・オペレーション資格とは輸送管理や荷役、保管、流通加工、包装などの物流業務に必要な知識や技能を証明する民間資格です。
若手やリーダークラスを想定した3級と、中堅からマネージャークラスを想定した2級があります。
中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施する試験に合格したら取得でき、受験料は3級が7,920円(消費税込み)、2級が8,800円(消費税込み)で、合格率は両級とも60%程度です。
管理系
物流業界には物品の品質を維持した上で、顧客が指定した条件で届ける物流管理という仕事もあります。
ここからは物流管理に就職・転職する際、あるいは仕事を行う際に役立つ資格をご紹介します。
物流技術管理士
物流技術管理士は日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が認定している民間資格で、取得することで物流業務全般の効率化や改善に関する知識とスキルを証明することができます。
21日間の物流技術管理士資格認定講座を受講後に修了試験に合格することで資格を取得できます。
受験資格には2年程度の実務経験が求められ、費用は会員が49万5,000円(消費税込み)、一般の方は60万5,000円(消費税込み)です。合格率は70%程度といわれています。
運行管理者
運行管理者は、貨物や旅客の輸送業務において安全運行を管理するために必要な国家資格です。
一般貨物、特定貨物、軽貨物事業者は営業所ごとに一定の人数以上の運行管理者を置くことが義務付けられています。
受験資格を得るためには、運行管理に関して1年以上の実務経験を有しているか、基礎講習を修了している必要があり、受験料は6,000円、合格率は40%程度といわれています。
物流経営士
物流経営士は全日本トラック協会が認定している資格です。
物流の基礎から専門的な知識まで、さらには物流業の経営について体系的に学ぶことができ、マネジメント能力やプレゼンテーション能力など、物流会社の経営日必要なスキルが身につき、合宿やディスカッションを通じて人脈も構築できます。
関東トラック協会会員事業者の役員あるいは社員で経営管理の実務経験が3年以上ある人が対象です。
約半年間にわたって110時間の研修に参加し、修了したら資格が認定されます。受講料は会員が35万円(消費税込み)、一般は40万円(消費税込み)です。
倉庫管理主任者
倉庫管理主任者は倉庫内の火災や事故、労災防止、その他倉庫業務の適正な運営を確保するための管理、従業員への教育を実施する管理者のことを指します。
倉庫事業を営むためには、倉庫業法で倉庫管理主任者を選任しなければなりません。
倉庫管理主任者は通常倉庫の管理に関する一定の実務経験を保有している人が専任されますが、実務経験者がいない場合は「国土交通大臣の定める倉庫の管理に関する講習(倉庫管理主任者講習)」を終了した者から選任することができます。
倉庫管理主任者講習の受講料は1万2,000円程度、講習は1日で、修了すれば倉庫管理主任者の選任要件の一つを満たすことができます。
ロジスティクス管理
ロジスティクス管理は中央職業能力開発協会が認定する検定試験です。
3級と2級があり、物流の概念と物流管理、在庫管理、物流システム管理、物流コスト管理、物流システムなどの専門的知識が問われます。
3級は物流事業所で働く若手からリーダークラスを想定していて合格率は65%程度、受験料は7,920円(消費税込み)です。
2級は中堅からマネージャークラスを想定していて、合格率は58%程度、受験料は8,800円(消費税込み)です
国際系
次は海外に輸出あるいは国内に輸入する貨物を取り扱う会社で役に立つ資格をご紹介します。
通関士
通関士とは輸出入に必要な申告手続きや書類の作成、関税に関わる手続きを行う専門家です。
国家資格であり通関業者には通関士の配置が義務付けられています。
通関士を取得するためには通関士試験に合格しなければならず、通関業法や関税法、通関実務に関する高い知識が求められ、合格率は10~25%程度、受験費用は3,000円(税込み)です。
貿易実務検定®
貿易実務検定®とは日本貿易実務検定協会が実施している民間資格です。
貿易書類や貿易法務、通関知識などの貿易実務やマーケティング、貿易実務英語の専門的な知識が求められます。
C級はおおむね実務経験1~3年で基礎的な知識を習得した人を、B級は同じく実務経験1~3年で貿易実務の中堅者層を、A級は3~4年で貿易に関する判断業務を行う人が対象となります。
受験費用はC級が6,270円、B級は7,480円、A級は12,760円(いずれも消費税込み)、合格率はいずれも30~50%といわれています。
国際航空貨物取扱士
国際航空貨物取扱士は航空貨物運送協会が実施している民間資格で、航空貨物の運輸スケジュールや書類の作成、運賃計算などの専門的な知識を有していることを証明できます。
世界100カ国以上で実施されており、取得すれば海外での就職・転職にも有利になります。
基礎コースと危険物コース、危険物資格更新コースという3つのコースがあり、合格率は基礎コースが60%、危険物コースは40%程度といわれています。
受験料は航空貨物運送協会の会員か否かやコースによって異なり、4~6万円程度です。
国際物流管理士
国際物流管理士は国際物流のスペシャリストであることを証明する資格で、日本ロジスティクスシステム協会が実施しています。
同協会が開催する国際物流管理士資格認定講座を受講することで取得できます。
講座の期間は約半年間で、輸出入の流れや貿易実務の基礎知識から海上輸送、航空輸送の仕組み、国際物流のリスクなど、国際物流に関する知識を体系的に学びます。
資格を得るためには単元ごとにレポート試験を受けなければなりません。費用は会員の場合44万円(消費税込み)、非会員は55万円(消費税込み)となります。
働きながら効率的に資格を取得するためには
働きながら資格を取得するのはなかなかハードルが高いです。
目指している資格を持ってている人が職場にいる場合は、勉強方法や受験対策についてアドバイスをもらうといいかもしれません。
働きながら独学で一から勉強するのは大変です。
費用はかかりますが、専門学校や講習会などに通えば、効率的に試験対策ができます。
また、会社によっては試験日や試験前に休暇が取得できる、専門学校や講習会に参加できるよう勤務時間を考慮する、受験費用や通学費用の一部を補助するなどの資格取得支援制度を福利厚生として用意している場合もありますので、そういった制度があれば積極的に活用しましょう。
まとめ
資格を取得することで就職や転職が有利になる、現在の職場でも収入アップやキャリアアップにつながる可能性があります。
ただし、どのような資格を取得したら実務に役立つのか、見極めることが大切です。
特に働きながら資格取得を目指すのであれば、効率が良い方法を選びましょう。
当サイトでは物流業界に就職・転職を考えている方に向けてさまざまな情報を提供しています。
志望動機の書き方やコツについては以下の記事を参考にしてみましょう。
『採用担当者に響く!物流業界の志望動機を作成するコツ』
今、物流業界では大きな変革期が訪れています。
今後業界全体がどのようになっていくか、以下の記事で考察しています。
『物流の2024年問題とは?給与や求人数にはどんな影響がある?』
ぜひ、これらの記事も参考にしていただき、ご自身の今後について考えてみましょう。