
退職交渉が終わり、退職が決定したら急浮上してくるのが、引き継ぎを「いつ・どのように・どこまでやればいいか」という問題です。初めての退職の場合、「何をどこまでやればいいのかがわからずに困る」「退職後に相談が来てしまった」ということも考えられます。そうならないために役立つ、引き継ぎのコツをご紹介します。何から手をつけていいのかわからないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
引き継ぎのコツ1:業務フロー作成・棚卸しの実施

「引き継ぎのとき、何をどこまでやればいいのかわからない」という状態になってしまう原因は、自分の業務フローを理解できていないことにあります。
自分の業務範囲を図解してみる
引き継ぎのコツ1つ目は、業務フロー作成と棚卸しです。まずは自分がどこからどこまでの業務を担当しているのか、業務フローを図解してみましょう。新規の営業であれば、接触・提案・受注・契約書締結・サービス利用開始・初期導入・既存顧客フォローなどが、業務フローとなります。
イレギュラーケースを記載することもあるかと思うので、その場合は組織で設定されたフローとどう違うのかを書いておくと、後任者が理解しやすくなります。
仮に事業部内で業務マニュアルが作られていない場合は、引き継ぎ資料と一緒に作っておくと非常に重宝されます。また退職前後にも関係性をよくできる可能性が上がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
業務の棚卸しをする
フローを作成したら、その中で行っている業務を全部箇条書きで書き出していってください。例えば、長い横向き矢印をフローごとに分けて書き、そのフローの下に縦書きで業務の項目を書いておくと、後任者も理解しやすい引き継ぎ書類が出来上がります。
営業の場合、既存顧客のフォロー方法が企業によって異なる場合も多いため、顧客ごとに実施しているフローを分けて書いておくと引き継ぎでトラブルが起きにくいです。
引き継ぎのコツ2:引き継ぎ項目の決定、内容の作り込み

業務フローに項目を追加したら、それを引き継ぎ項目としてフロー順に番号を振り、項目ごとにページを分けて手順を書いていきましょう。
普段行っている業務と並行しながら、順番を記載するようにすると抜け漏れがなくなります。年あるいは2カ月に1回などの頻度が低い仕事は、カレンダーに実施した日を記入して書いておくと、どのくらいの頻度で仕事をすべきかというスケジュール感も併せて伝えられます。
自分が先回りして行っている業務なども、どれくらいの頻度で行っていたのかを伝えておくと顧客側に迷惑をかけずに済むでしょう。
一般的な業務内容に含まれない特定の顧客に応じて対応が必要なもの、イレギュラーな項目があれば、注意点として追記しておきましょう。何らかのツールを使う場合は、画面のキャプチャをして業務の流れをまとめておくと、後任が見ながら作業できるのでミスを防げます。
引き継ぎ作成の際の注意点
注意点としては、下記の3つがあります。
・後任者は決定済みか
・後任者の社歴を考慮する
・背景説明は十分に行う
後任者は決定済みか
体制が整っていない企業であれば、「後任者に引き継ごうと思っていたけれど、なかなか決まらず結局引き継ぎの実施ができなかった」ということもあるものです。後任者が決まっていない状態であれば、動画やキャプチャなどで流れをわかりやすくするなどの工夫をしましょう。
後任者の社歴を考慮する
後任者の社歴が浅い場合は、事業部の業務フローを理解していない可能性もあります。そのため、事業部の業務フローも含めて引き継ぎ資料の中に入れておくようにしましょう。ツールにもまだ慣れていない場合は、どう探せばいいのかも追記しておくと親切です。
背景説明は十分に行う
「◯◯という業務を行ってください」というだけだと、その業務をやらなければならなくなった背景が不明なまま対応することになります。例えば「こちら側の不手際で顧客にご迷惑をおかけしたという経緯があって、今◯◯という作業が発生している。提出が遅れてしまうと、二次的なクレームに発展する可能性がある」など、前任者は把握していても、後任者の引き継ぎに含まれていなければわかりません。
こうした引き継ぎロスがあると、会社としての体制を疑われる可能性もあるので、注意が必要です。
引き継ぎのコツ3:引き継ぎスケジュールの決定と、後任へ引き継ぎの実施
引き継ぎ資料の作り込みと並行して引き継ぎスケジュールを決定し、後任へ連絡しましょう。引き継ぎ期間に余裕があるようであれば引き継ぎをしたあと、実際に作業をしてもらって疑問があればその都度聞いてもらうようにすると、初期のトラブルを避けられます。
退職発表・後任決定ができたらすぐに引き継ぎスケジュールを確定し、実際に作業してもらうところまでをカバーできるようにしてあげましょう。
引き継ぎ時の注意点
引き継ぎする際の注意点は以下の3つになります。
・退職前に業務を少しでも経験しておけるスケジュールにする
・一度ではなく何度かに分け、復習をする
・名前だけでは覚えにくいので、写真をつける
退職前に業務を少しでも経験しておけるスケジュールにする
引き継ぎをする前任者は、「引き継ぎ事項に漏れはない」と思っていても、実際は後任者が業務に取り組んでから「わからないけれど退職してしまったからもう聞けない」となることが多いものです。
学校での勉強と同じく、人の記憶は反復して習得しなければ身につきません。細かく説明しても覚えきれないため、最初は全体感を伝えて業務に入ってもらうようにしましょう。実際に業務に入って初めて「この場合はどうしたらいいのか」という疑問が出てくるものです。
何か作業を見せる際には、後任者に動画を撮ってもらうようにお願いするなど、あとから見ても役立つ資料を残しておくのも良い方法です。
一度ではなく何度かに分け、復習をする
顧客内の組織図など、複雑な説明をする場合は何度かに分けて前回の振り返りをしつつ、実施するのがおすすめです。複雑な内容を口頭だけの説明で理解するのは難しいので、何度かに分けて集中力が続くように話しましょう。
名前だけでは覚えにくいので、写真をつける
面会ができないという場合もあるので、可能であれば先方の写真、なければイラストや「◯◯さん似」などの特徴のコメントをつけて、キャラクターを立たせると後任者の中でも相手先企業の位置関係が理解しやすくなります。
後任者の集中力・理解度合いをよく観察しながら引き継ぎをしていくと、スムーズに引き継ぎができるだけでなく、退職しても会社に迷惑をかけなくて済みます。注意点を参考に、ぜひスムーズな引き継ぎを実現してみてください。
まとめ
退職が決まって引き継ぎをするという段階では、次の会社や生活で頭がいっぱいという状態になっている可能性はあります。しかし、引き継ぎがきちんとできるかどうかで、後任はもちろん、社内外の人に迷惑をかけるかどうかが決まります。無用なトラブルを避けるためにも、引き継ぎを実施したあとに実際の業務を行ってもらうという形で質問を受け付けられるようにしておくと安心です。
引き継ぎ資料や引き継ぎ内容は早々に伝えておき、退職までの間に実務がまわせる段階までサポートできるように、準備をしておきましょう。その人の仕事ぶりは退職後にも表れます。立つ鳥跡を濁さずの精神で、最後まで丁寧に仕事をやりきって退職できるようにしてください。