
社会で働く以上、多かれ少なかれ人と接する機会があるため、人間関係の悩みはつきものです。実際に仕事の悩みや離職理由、メンタルの不調の原因として、職場の人間関係が大きな割合を占めています。
とはいえ人間関係をうまく構築し、ストレスを感じても、つど解消していかないと、社会人としてやっていけないのも事実です。今回は人間関係の悩みを改善する処方箋をお送りします。
職場の人間関係がうまくいかない理由とは?
職場の人間関係がうまくいかないのには何らかの理由があり、特に多いものとして以下のことが挙げられます。まずはご自身を見つめ直し、原因を特定しましょう。
価値観の違い
人はそれぞれ生まれ育った環境や性格、年代や性別などが異なり、考え方も違ってきます。人それぞれ価値観が違うのは当然のことで、それが個性でもあります。
学生時代であれば気が合う友達だけと接していればよかったかもしれません。しかし、職場ではさまざまな年齢、性別、出身地、バックボーンをもった人が集まって一緒に仕事をすることになるので、価値観による対立が起こりがちです。
コミュニケーション不足
コミュニケーションが不足していると相手の考え方や価値観がわかりません。特に一緒に仕事をしているのにも関わらずコミュニケーションをとらないとなると、些細な誤解やすれ違いが生じて人間関係が悪化する可能性があります。それだけでなく、伝達漏れや認識の違いなどで、業務に支障が出ることも考えられます。
また、コミュニケーションをとらないこと自体が、「あの人は私のことが嫌いなのかも」「あの人は愛想が悪い」といった誤解を与え、人間関係悪化の原因になることもあります。
長時間一緒に過ごす
長時間一緒に過ごしていると良い面も悪い面も見えてきます。お互い好きで結婚したはずなのに、一緒に暮らすことで交際していたときにはわからなかった相手の短所が見えてしまって、離婚に至るカップルも少なくありません。
職場も同じです。出会った当初は好印象でも、一緒に仕事をしていくにつれ相手の短所が露見して人間関係が悪化する可能性があります。
心に余裕がない
特に慌ただしい職場や繁忙期を迎えている職場にありがちです。忙しかったり疲れていたりすると心に余裕がなくなり、どうしても他人に強くあたってしまったり、雑な対応をしてしまったりすることがあります。
本人からするとたまたまかもしれませんが、相手にとっては嫌な気持ちになってしまいます。
ストレス
人間関係が悪化するとどうしてもストレスが溜まり、特に苦手な人と話すときには「また怒られるんじゃないか」「あの人とは話したくない」と萎縮や緊張してしまいます。なかには過去の体験がフラッシュバックする人もいるかもしれません。こうしてコミュニケーションがとれないと余計にストレスが溜まるという負の連鎖に陥り、やがて人と話すこと自体が億劫になります。
このケースはかなり危険で、早めに対処しないとメンタルにも悪影響を及ぼしかねません。
職場の人間関係を改善するためのコツ

人間関係の悩みは上記のいずれか、もしくは複数が原因となっていることがほとんどです。原因を知ったうえで以下のようなコツを意識して人と接することで、人間関係が改善できる可能性があります。
好感をもたれるよう接する
まずは相手に好感をもたれるよう意識しましょう。毎日朝は「おはようございます」、すれ違ったときは「お疲れさまです」、帰宅するときには「失礼します」と、元気に挨拶をするだけでも、ガラッと印象が変わります。また、話すときは極力、笑顔で話しましょう。
社会人の基本ですが、これを実践することでコミュニケーションが円滑となり、人間関係が良くなる可能性が大いにあります。
相手に好印象を与えるためにも、もう一度ビジネスマナーをおさらいしておくことも大切です。
▼「ビジネスマナー」については下記の記事をご覧ください。
自分を変える
人間は30歳までに人格形成が決まるといわれています。人を変えるのは簡単なことではありません。人を変えるよりも自分が変わるほうがはるかに楽です。
たしかに大人になると性格をガラッと変えるのは難しいかもしれません。しかし、自分で少し意識すれば変えられる部分もあるのは事実です。「あの人はせっかちだからなるべく短めに要点だけ伝えよう」「あの人は忙しいとあたりが強くなるからあとで話しかけよう」というように意識して行動するだけでも、トラブルが少なくなります。
相手に過度な期待をしない
最初から相手に過度な期待をもちすぎると、それが満たされなかったときに裏切られた気持ちになります。たとえば、子どもと「次のテストで100点をとろう」と約束をして95点だった場合、親としては落胆してしまいます。少し目標を下げて「90点をとろう」という目標を設定して95点をとった場合は「よくやった」とほめてあげることができます。
完璧を求めすぎず、「こんなもんだろう」と期待値をあえて少し下げることも、相手を受け入れるうえでは大切です。
コミュニケーションを密にとる
コミュニケーションの量が多ければ多いほど、人間関係も円滑になりやすいです。仕事の話だけでなく雑談や趣味、プライベートに関する話をすることで、相手との距離も縮まります。
たとえば、昼休みは一緒にランチに行ったり、休憩時間に休憩室や喫煙所などで積極的に話しかけたりすることで、人間関係を構築することができます。こうした場で仕事に活かせる情報や悩みが解決できるアドバイスがもらえる可能性もあるので一石二鳥です。
相手の価値観を知り、受け入れる
人間関係の悩みは、価値観や考え方の相違からくることが多いです。極端な例は外国人です。国も違えば文化も言語も違うため、大きな価値観の相違があります。そこで「日本ではこうだから」と自分の価値観を押し付けるとトラブルになってしまうでしょう。お互いが相手の国の言葉や風習、考え方を知ることで、国籍は違っても仲良くすることができ、文化の違いが「おもしろい」と感じることすらあります。
日本人同士も同じです。まずは相手の価値観を知り、受け入れましょう。
相手の立場を考える
コミュニケーションをとるうえでは相手の立場を考えることも大切です。たとえば、忙しそうにしている人に無理に話しかけても、冷たくあしらわれて余計に人間関係が悪化する可能性があります。
相手の状況や表情などをうまく読みとって、臨機応変にコミュニケーションをとりましょう。
職場の人間関係のストレスをうまく解消しよう

ここまで職場の人間関係を改善するコツをご紹介しましたが、どうしてもうまくいかない場合もあるかもしれません。そのまま無理にがんばり続けると、余計に悪化する可能性もあります。ここからは、人間関係のストレスを解消する方法についてご紹介します。
苦手な人や対立した人と一時的に距離をとる
苦手な人や対立した人と接点をもたなければ、ストレスは溜まりません。時間が経つことで冷静に考えられ、またうまくコミュニケーションがとれるようになる可能性も十分にあります。
最低限の業務連絡だけして、それ以外はしばらく距離を置くというのもひとつの手段です。
自分の考え方を見つめ直す
人それぞれに価値観や考え方の違いがあるのは、しかたのないことです。なかにはどうしても受け入れられないこともあるかもしれません。無理に改善しようとせず、「苦手な人がいるのはしかたがない」「誰にでも好かれるのは不可能」という考え方をすることで気持ちが楽になります。
苦手な人の長所を見つける
苦手な人に対しては、どうしても短所に目が行きがちです。そこで、その人の長所を考えてみましょう。「この人のここはダメだけど、この部分はすごい」というように、短所ばかりではなく長所にクローズアップすることで敬意がもてるようになります。
休日はしっかり休む
ストレスの一番良い解消方法はしっかり休むことです。毎日しっかりと睡眠をとり、休日は仕事のことを考えず、趣味に熱中するなどして気分転換をすることで、ストレスを解消することができます。職場から離れて冷静になれば、考え方が変わったり、新しい方策が生まれたりするかもしれません。
それでも良くならないときは……
どうしても悩みが改善できず、ストレスでメンタルが悪化している方は無理をしないでください。疲れが溜まっていると感じたら休暇をとって心身をしっかりと休めましょう。苦手な人とどうしても関係が改善できないと感じたら、配置転換やリモートワークを要望してみるのも手です。特にリモートワークは最近普及しているので、オフィスワークなど自宅でできる仕事であれば受け入れてもらえる可能性もあります。
食欲がない、眠れない、起きれない、異常に疲れやすいなど体調に支障をきたしている場合は、メンタルに不調をきたしている疑いもありますので、心療内科を受診してみましょう。身体や心を壊すくらいなら、退職や転職を検討するという選択肢もあります。
まとめ
社会で働くうえで人間関係の悩みはつきもので、誰もが大なり小なり悩んでいるものです。人間関係を構築することも、社会人にとっては必要なスキルのひとつ。原因はちょっとしたすれ違いかもしれません。ストレスを発散しながらコツを押さえてコミュニケーションを重ねていくことで、職場の人間関係が良くなる可能性も十分にあります。
とはいえ、どうしてもストレスを感じる場合は不調をきたす前に配置転換や休職、転職などで職場から物理的に距離を置くことも考えてみましょう。身体や心を壊して限界まで我慢するよりは、早めに離れてしまったほうが得策といえます。「いざというときは逃げてもいい」「こうした手段もあるんだ」「生きていればいくらでもやり直しはできる」ということを心の片隅で意識しておくだけでも、気が楽になります。
今回の記事が、少しでも人間関係で悩まれている方の参考になれば幸いです。