三大キャリアからの乗り換え先として、しばしば選択肢にあがる格安SIMや楽天モバイル。両者とも三大キャリアに比べると割安ですが、果たしてどちらがよりお得なのか。
また、両者にはどんな違いがあるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、以下のような疑問を解消しています。スマホ会社の乗り換えで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
・格安SIMと楽天モバイルの違い
・楽天モバイルのメリット・デメリット
・楽天モバイルの代わりとなる格安SIM
格安SIMの基礎知識

格安SIMとは、大手キャリア(docomo、au、SoftBank)の回線を借りることで、設備投資やメンテナンス費用を抑え、低価格でのサービス提供を実現しているキャリアのこと。
厳密には、自社回線を持つキャリア(MNO)の回線を借りて通信事業を行うキャリアを「MVNO」と呼び、MVNOが格安で提供するSIMを「格安SIM」と呼びます。
とはいえ、一般には「格安SIM」「MVNO」「格安スマホ」など、全て同じ意味で使われているのが現状です。
格安SIMは、大手キャリアの従来プランと比較して月額料金が安く、家計の節約において外せないポイント。近年では、スマホに詳しくない層の認知度もかなり高くなってきたといえるでしょう。
楽天モバイルの基礎知識

出典:楽天モバイル
2020年4月までは、MVNOとしてサービスを提供してきた楽天モバイル。現在はdocomo・au・SoftBankに次ぐ第4のキャリアとして、自社回線によるサービスを提供しています。
選べるプランは1つだけ。ひと月のデータ通信量に応じて基本料金が変わる従量課金型を採用したことで、大きな話題を集めました。
月に100GB使おうとも、基本料金は最大3,278円。さらに、専用アプリからの発信に限り、追加料金なしでかけ放題が利用できます。大容量を必要とする人や電話をよく使うという人にとっては、魅力的なキャリアといえるでしょう。
格安SIMと楽天モバイルの違い

前述したとおり、楽天モバイルは自社回線を利用してサービスを提供しているMNOなので、MVNOでもなければ格安SIMでもありません。楽天モバイルを格安SIMと勘違いしている人も多いですが、全く異なる仕組みで運営されているのです。
ただし、自社回線を使ったサービスにはメリットもあればデメリットもあります。特に、楽天モバイルの場合はそれが顕著に表れているため、事前の確認が必須といえるでしょう。
楽天モバイルのメリット4選
自社回線を持っている楽天モバイルには、格安SIMにはない特徴的なメリットがあります。
・大容量通信がお得
・固定回線代わりになる
・追加料金なしで無制限かけ放題
・SPUの対象である
具体的には上記の4つ。初心者にもわかりやすく解説しています。
大容量通信がお得
楽天モバイルは、データ通信量の分だけ基本料金が上がるワンプラン。3GB未満は1,078円(税込)、20GB未満は2,178円(税込)、20GB以上はどれだけ使っても3,278円(税込)です。
3GB未満および10GB未満の基本料金においては、格安SIMと比べてもコストパフォーマンスが飛び抜けて良いわけではありません。
一方で、たとえ100GB使っても、200GB使ったとしても3,278円(税込)というのは、自社回線だからこそできる破格のコストパフォーマンスといえるでしょう。
たとえば、比較対象としてdocomoのオンライン専用プラン「ahamo」をみてみると、基本プランに大盛りオプションを付けた場合、 データ容量100GBで4,950円/月(税込)。いかに楽天モバイルのコストパフォーマンスが高いかがわかるでしょう。
楽天モバイル(100GB) | ahamo(100GB) | |
基本料金 | 3,278円 | 2,970円 |
オプション料金 | なし | 1,980円 |
合計金額 | 3,278円 | 4,950円 |
さらに、繰り返しになりますが、200GB使っても300GB使っても、楽天モバイルの基本料金は変わらないのです。
固定回線代わりになる
どれだけ使っても3,278円(税込)というコスパの良さから、楽天モバイルを固定回線代わりに利用する人も多いです。
たとえば、楽天モバイルのSIMカードを挿入したポケットWi-Fiを自宅に置いておけば、家中のあらゆる端末をインターネットに接続することができます。
当然ながら、光回線やホームルーターに通信速度や安定性で勝ることはありませんが、金銭的には楽天モバイルに軍配があがるでしょう。
以下に、楽天モバイルと各固定回線の料金表を記載しておきます。なお、楽天モバイルとSoftBank Airに戸建プランやマンションプラン等はありませんが、比較のために記載しているものです。
戸建プラン | マンションプラン | |
楽天モバイル | 3,278円 | 3,278円 |
SoftBank光 | 5,720円 | 4,180円 |
SoftBank Air | 5,368円 | 5,368円 |
追加料金なしで無制限かけ放題
楽天モバイルユーザー専用アプリ「Rakuten Link」からの発信に限りますが、オプション料金なしで無制限かけ放題を利用できます。
他社の無制限かけ放題のオプション料金はおよそ1,500円前後なので、これが追加料金なしで利用できるのは大きな魅力といえるでしょう。
「Rakuten Link」特有のデメリットはあるものの、最低1,078円(税込)/月でかけ放題が実現するため、自宅の固定電話代わりに契約しているユーザーもいるほどです。
デメリットに関しては、次の章で詳しく解説しています。
SPUの対象である
楽天グループのサービスを利用することにより、楽天市場における獲得ポイントがアップするシステム、通称「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)。楽天経済圏を活用中の人は、特に気にして生活しているのではないでしょうか。
そんなSPUが、楽天モバイルを契約中なら無条件で「+2倍」、ダイヤモンド会員ならさらに「+1倍」となります。
楽天モバイルを契約するだけで、一気に最大「+3倍」となるので、楽天経済圏を活用している人にとっては見逃せないメリットといえるでしょう。
楽天モバイルのデメリット3選
他のキャリアにはないメリットが魅力的な楽天モバイルですが、自社回線ゆえのデメリットも存在します。場合によっては、無視できない致命的なデメリットになり得るので、必ず目を通しておいてください。
・電波が弱い
・無料通話の音質が悪い
・実はお得じゃないかもしれない
電波が弱い
楽天モバイルエリアの人口カバー率は、2022年4月時点で97.2%。全国のほとんどを網羅しているといえますが、ネット上では「楽天モバイルは電波が悪い」という噂が飛び交っていることをご存じでしょうか。
残念ながらこの噂は真実ですが、厳密には「電波が弱い」という表現の方が正しいです。
建物を貫通したり回り込んだりして進む障害物に強い電波のことを「プラチナバンド」と呼びます。自社回線を持つ携帯キャリアに必須といえる要素ですが、docomo・au・SoftBankの三社に割り当てられているプラチナバンドを楽天モバイルは持っていません。
そのせいで、建物内や地下における電波状況が悪く、圏外になってしまうことが多々あるのです。
結果として、「楽天モバイルは電波が悪い」とのクチコミが広がったと思われます。いくら使い放題とはいえ、電波が入らないことにはどうしようもないのです。
近年、急速に基地局を増やし、人口カバー率を伸ばしている楽天モバイルですが、エリアの広さと電波の強さは別問題。建物内や地下でも問題なく使用できるためには、やはりプラチナバンドの取得が必須事項なのです。
そのため楽天モバイルは、現在docomo・au・SoftBankだけに割り振られているプラチナバンドの再分配を要求しているところですが、協議は難航しています。仮に、プラチナバンドの再分配が可能になったとしても、実際に使えるようになるまで10年かかるとも言われているのです。
少なくとも、これから数年間は「電波の入らないキャリア」のままである確率が高いと言わざるを得ないでしょう。
Rakuten Linkの通話品質が悪い
「Rakuten Link」アプリによる無料通話は、インターネット回線を利用した通話。簡単にいうと、LINE電話のようなものです。
この仕組みのおかげで無料通話を実現しているというメリットがある反面、通話品質が電波状況に大きく左右されてしまうというデメリットもあります。
たとえば、十分な通信速度が確保できていない状態では、音声が遅延したり途切れたり、もしくは発信できない等の症状が発生してしまうことがあるのです。
前述した電波の弱さが無料通話のコンディションに大きく影響してしまうため、プラチナバンドのない楽天モバイルとRakuten Linkアプリの相性は悪いと言わざるを得ません。
楽天モバイルの無料通話に他のキャリアと同等の通話品質を期待してしまうと、契約後にガッカリしてしまうこともあるでしょう。
実はお得じゃないかもしれない
3GB未満、20GB未満、20GB以上という3つの節目がある楽天モバイルのワンプランですが、それぞれの料金設定は、実はそれほどお得とはいえません。
その証拠に、楽天モバイルと格安SIM各社の基本料金を比較してみると、多くのパターンで格安SIMの方が低料金であることがわかります。
3GB | 20GB | 30GB | 40GB | 50GB | |
楽天モバイル | 1,078円 | 2,178円 | 3,278円 | 3,278円 | 3,278円 |
日本通信SIM | 730円 | 2,178円 | ー | ー | ー |
イオンモバイル | 1,078円 | 1,958円 | 3,058円 | 4,158円 | 5,258円 |
リンクスメイト | 902円 | 2,970円 | 3,905円 | 4,840円 | 5,500円 |
LIBMO | 1,078円 | 1,991円 | 2,728円 | ー | ー |
一方で、20GBを大幅に超過したデータ通信を行う場合は、楽天モバイルの方がお得であることがわかるでしょう。つまり、ひと月のデータ通信量が少ない人は、格安SIMを契約する方がお得な可能性が高いのです。
格安SIMと楽天モバイルは結局どっちがいいの?

格安SIMと楽天モバイルの違いや楽天モバイルのメリット・デメリットについて解説しましたが、結局どちらを選べばよいのかわからないという人もいるでしょう。
その人の使い方にもよるため、一概に答えられませんが、それぞれどんな人におすすめかをご紹介します。
楽天モバイルがおすすめな人
メリット・デメリットを考慮して、どんな人が楽天モバイルに向いているのかをご紹介します。
・電波状況が良い場所に住んでいる人
・ひと月のデータ通信量が多い人
・よく電話をかける人
・楽天経済圏を活用している人
電波状況が良い場所に住んでいる人
楽天モバイルの最大のデメリットといえば電波が弱いこと。自宅や仕事場での電波状況が良いことは、楽天モバイルを契約するうえで必須条件といえます。
とはいえ、電波状況など実際に使ってみるまでわからないのが現実です。
幸い、楽天モバイルは事務手数料やMNP転出手数料が無料。転入にも転出にも手数料が発生しないので、一度契約してみて実際に使ってみるのも一つの手でしょう。
ひと月のデータ通信量が多い人
楽天モバイルは、ひと月のデータ通信量が多ければ多いほどお得なキャリアです。具体的には、30GBを超えてデータ通信を行う場合、十分にその恩恵を受けることができるでしょう。
一方で、ひと月のデータ通信量が少ない人は、格安SIMの方がスマホ代を抑えられる可能性が高いです。代わりとなるおすすめの格安SIMは、次の章で紹介しています。
よく電話をかける人
「Rakuten Link」からの発信に限り、追加料金なしで無制限かけ放題を利用できるため、よく電話をかけるという人におすすめです。
ただし、「Rakuten Link」による無料通話は、通常の通話に比べて音質が低いことに注意してください。
楽天経済圏を活用している人
楽天モバイルを契約するだけで、SPUが「+2倍」ダイヤモンド会員ならさらに「+1倍」と、一気に最大「+3倍」が実現します。
楽天経済圏を活用している人にとって、SPUは重要な要素。毎月コンスタントに楽天市場で買い物をするという人におすすめです。
格安SIMがおすすめな人
楽天モバイルよりも格安SIMの方が向いていると思われる人の特徴をご紹介します。
・ひと月のデータ通信量が少ない人
・大手キャリアの回線を使いたい人
・電波状況が悪い場所に住んでいる人
ひと月のデータ通信量が少ない人
楽天モバイルのデメリットでも触れましたが、ひと月のデータ通信量が少ない人は、格安SIMの方が月額料金を抑えられる可能性が高いです。
具体的には、ひと月のデータ通信量が30GB以下の場合、基本料金においては下記表のとおり格安SIMの方がコスパに優れています。
3GB | 7GB | 20GB | 30GB | 40GB | 50GB | |
楽天モバイル | 1,078円 | 2,178円 | 2,178円 | 3,278円 | 3,278円 | 3,278円 |
日本通信SIM | 730円 | ー | 2,178円 | ー | ー | ー |
HISモバイル | 770円 | 990円 | 2,190円 | ー | ー | ー |
イオンモバイル | 1,078円 | 1,518円 | 1,958円 | 3,058円 | 4,158円 | 5,258円 |
LIBMO | 1,078円 | ー | 1,991円 | 2,728円 | ー | ー |
とはいえ、あくまでもデータ通信量に対する基本料金を単純に比較しただけなので、実際にはその他のメリット・デメリットも考慮する必要があるでしょう。
大手キャリアの回線を使いたい人
楽天モバイルと大手キャリアの間には、回線の安定性において、大きな壁があると言わざるを得ません。品質向上のため、楽天モバイルも奮闘しているところですが、プラチナバンドを取得できない限り大手キャリアとの差は埋まらないでしょう。
一方で、格安SIMは自社回線を持たず、大手キャリアの回線を借りることでサービスを提供しています。大手キャリアの安定した回線を使いたいという人は、楽天モバイルより格安SIMの方がおすすめです。
電波状況が悪い場所に住んでいる人
楽天モバイルがいくら使い放題とはいえ、自宅や仕事場などの電波状況が悪いのなら、さすがに選択肢には入らないでしょう。
しかし、使ってみないとわからないのが電波というもの。楽天モバイルのエリアは公式サイトで確認できますが、エリアと実際の電波の強さは別問題なのです。
幸い、楽天モバイルは事務手数料やMNP転出手数料が無料。転入にも転出にも手数料が発生しないので、一度契約してみて実際に使ってみるのも一つの手でしょう。
楽天モバイルの代わりにおすすめの格安SIM

「やっぱり楽天モバイルではないかな」と感じた人のために、代わりにおすすめする格安SIMを以下のパターン別に紹介します。
・データ通信量が3GB以下
・データ通信量が7GB程度
・データ通信量が20GB程度
・データ通信量が30GB程度
・かけ放題だけが必要な人
データ通信量が3GB以下
日本通信SIM

出典:日本通信SIM
プラン名 | シンプル290プラン |
データ容量と基本料金 | 1GB – 290円 |
追加データ | 220円(1GB単位) |
使用回線 | docomo |
通話料70分無料 | 700円/月(税込) |
無制限かけ放題 | 1,600円/月(税込) |
eSIM | ◯ |
日本通信SIMの「シンプル290プラン」は、データ容量1GBで基本料金290円のプラン。1GBを超過した場合は220円/1GBでデータ容量を追加購入する形になっています。
仮に、ひと月に3GBしかデータ通信を行わなかった場合、日本通信SIMは月額730円、楽天モバイルは月額1,078円。3GBで月額730円は業界最安料金であり、ライトユーザーにおすすめできる格安SIMです。
データ通信量が7GB程度
HISモバイル

出典:HISモバイル
7GB – 880円の良コスパ
プラン名 | 自由自在プラン |
データ容量と基本料金 | 7GB – 990円 |
使用回線 | docomo |
5分かけ放題 | 500円/月(税込) |
無制限かけ放題 | 1,480円/月(税込) |
eSIM | ◯ |
2022年5月からの新料金プランで、格段にコスパが良くなったHISモバイル。7GBで月額990円は業界最安料金であり、ミドルユーザーにおすすめできる格安SIMです。
楽天モバイルが3GBで月額1,078円であることを考えると、HISモバイルのコスパがいかに優れているがわかるでしょう。
データ通信量が20GB程度
イオンモバイル
出典:イオンモバイル
プラン名 | さいてきプラン |
データ容量と基本料金 | 20GB – 1,958円 |
使用回線 | docomo、au |
5分かけ放題 | 550円/月(税込) |
10分かけ放題 | 935円/月(税込) |
無制限かけ放題 | 1,650円/月(税込) |
eSIM | × |
あの大手企業イオングループが提供するイオンモバイル。20GBで月額1,958円は業界最安料金であり、ヘビーユーザーにおすすめできる格安SIMです。
楽天モバイルが20GBで月額2,178円であることを考えると、両者の基本料金はほぼ同じ。「Rakuten Link」による無料通話がある分、楽天モバイルの方がお得にみえますが、回線の安定度ではイオンモバイルに軍配があがります。
データ通信量が30GB程度
LIBMO(リブモ)
出典:LIBMO
プラン名 | なっとくプラン |
データ容量と基本料金 | 30GB – 2,728円 |
使用回線 | docomo、au |
5分かけ放題 | 550円/月(税込) |
10分かけ放題 | 770円/月(税込) |
無制限かけ放題 | 1,430円/月(税込) |
eSIM | × |
LIBMOは大容量のコスパに定評がある格安SIMキャリア。30GBで月額2,728円は業界最安料金であり、ヘビーユーザーにおすすめできる格安SIMです。
楽天モバイルが20GB以上で月額3,278円であることを考えると、LIBMOのコスパがいかに優れているがわかるでしょう。ちなみに、ひと月のデータ使用量が30GB程度の場合は格安SIMの方が割安。逆に、30GBを超える場合は楽天モバイルの方が割安です。
かけ放題だけが必要な人
povo

出典:povo
プラン名 | povo2.0 |
データ容量と基本料金 | 0GB – 0円 |
使用回線 | au |
5分かけ放題 | 550円/月(税込) |
無制限かけ放題 | 1,650円/月(税込) |
eSIM | ◯ |
povoは、auが提供するオンライン限定の格安プラン。基本料金が0円なので、「データ通信は必要ない」「かけ放題だけが必要」という人に最適なキャリアです。
かけ放題の安さだけを考えると、追加料金のない楽天モバイルの方が一見お得にみえますが、通話品質には天と地ほどの差があります。auの回線をそのまま使えるpovoの安定性は抜群であるため、ビジネス用としても安心して使えるでしょう。
両者の特徴を理解して乗り換えよう

格安SIMと楽天モバイルでは、そもそもサービスの提供方法が全く異なっており、それぞれにメリットとデメリットがあります。理想のキャリアに乗り換えるためには、両者の特徴を十分に理解してから乗り換えることが大切です。
初心者の人ほど「キャリアは一度替えたらしばらく使うもの」と意識しがちですが、決してそんなことはありません。自分に最適なサービスに出会うまで、キャリアを転々としても構わないのです。
あまり考えすぎることなく、まずは契約してみて使用感を試すのも一つの方法ですよ。